社員が仕事を終えて車で帰宅。その途中で事故を起こし、重い後遺障害が残った。『会社を出た後の事故だから関係ない』――本当にそうでしょうか?

帰宅途中の交通事故で大破した車の横から、スーツ姿の男性従業員が担架で救急車へ搬送される場面

疲れ切った社員が仕事を終えて、車で帰宅。その途中で事故を起こし、重い後遺障害が残った。

残業を終え、ネクタイを緩めて会社を出てから40分後。家族から電話が入りました。

「帰宅途中に事故を起こして、病院へ搬送されました」

経営者の頭に浮かんだのは、こんな言葉です。

「もう退勤した後だ。会社を出た後の事故だから、会社は関係ないのでは?」

ところが、帰宅途中の事故は「勤務時間外だから終わり」とは限りません。社員本人の補償、事故の相手方への賠償、車両の所有者、会社の指示や管理状況を分けて確認する必要があります。

帰宅途中のけがは、通勤災害になる可能性があります

業務を終え、就業場所から住居へ合理的な経路・方法で移動していた場合、その途中の事故は労災保険上の通勤災害となる可能性があります。自動車は、一般に通勤に用いられる合理的な方法の一つです。

会社へマイカー通勤を届け出ていなかった、または承認されていなかったという事情だけで、直ちに通勤災害から外れるとは限りません。

一方、帰宅途中に私的な目的で経路を外れたり、長時間の私用を挟んだりした場合は、逸脱・中断として扱いが変わる可能性があります。事故前の行動を、出退勤記録、位置、時刻、立寄り先などから確認します。

疲労や長時間労働を見落としていませんか

事故が帰宅途中だったとしても、社員がどの程度の時間働き、休憩を取れていたか、強い眠気や体調不良を訴えていなかったかは確認すべき事項です。

帰宅方法が車しかない社員に深夜までの勤務が続いていた、疲労を把握しながら運転して帰ることを前提にしていたなどの事情があれば、「会社を出た後だから関係ない」と切り分ける前に、労働時間管理や安全配慮の状況も整理する必要があります。

会社の責任と、社員本人の補償は別の問題です

社員本人が通勤災害として労災保険給付を受けられることと、会社が事故の相手方に賠償責任を負うことは同じ問題ではありません。

通常の私有車による帰宅で、会社が常に相手方への責任を負うわけではありません。ただし、事故車が会社所有だった、帰宅途中に会社の指示で荷物を届けていた、緊急の業務を命じられていたなど、会社の運行支配や運行利益、業務との関係によって判断材料は変わります。

「マイカーだから本人任せ」でよいでしょうか

マイカー通勤を認めているのに、免許証、有効期限、任意の補償契約、車検、利用車両を一度も確認していない。申請された車と実際の通勤車両が違う。事故が起きても会社への連絡期限が決まっていない。

この状態では、事故後に必要な情報が集まらず、労災手続、勤務の取扱い、家族対応、取引先への説明が遅れるおそれがあります。

事故の連絡を受けた直後の確認事項

  • 救護、警察への届出、医療機関への搬送状況
  • 事故時刻と退勤時刻
  • 通常の帰宅経路上だったか、私的な立寄りがあったか
  • 社員本人、同乗者、相手方の負傷状況
  • 車両が私有車、会社所有車、借用車のどれか
  • 事故時に業務上の指示や荷物の運搬がなかったか
  • 自賠責・任意の補償契約の契約先と連絡状況
  • 通勤災害としての手続が必要か

平時に整えておきたいマイカー通勤管理

  • マイカー通勤の許可・届出制度
  • 免許証、車検、任意の補償契約の定期確認
  • 対人・対物補償額についての社内基準
  • 登録車両以外を使う場合の届出
  • 事故時の救護、警察・契約先・会社への連絡順序
  • 業務で私有車を使わせる場合の別ルール

事故が起きてから「通勤だったのか、業務だったのか」を議論するのではなく、会社がどこまで許可し、何を確認し、業務利用とどう区別するかを平時に決めておきましょう。

参考資料

ご確認ください

本ページは、法人・医療機関等の経営リスクを考えるための一般的な情報です。通勤災害への該当性、会社または運転者の賠償責任、補償の補償可否は、経路、事故状況、車両の所有・使用関係、業務指示、契約内容等によって異なります。実際の事故については、警察、労働基準監督署、契約先、弁護士等へご確認ください。

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