地震リスク|従業員編
地震を起こした責任はなくても、従業員を危険な状態で働かせた責任までなくなるとは限りません。
地震そのものは不可抗力です。しかし、倒れやすい棚を放置していた、避難経路が塞がれていた、安全確認をせず業務を続けさせた。その判断や管理まで、すべて不可抗力になるとは限りません。
「地震だから仕方がなかった」で終わらないこと
会社には、従業員が生命・身体の安全を確保しながら働けるよう配慮することが求められます。問題になるのは地震の発生ではなく、平時の備えと発生後の判断です。
倒れる・落ちる
棚、ロッカー、照明、医療機器、商品、書庫。固定できたものを放置していなかったでしょうか。
逃げられない
避難口の前に荷物がある、鍵の場所を一人しか知らない、停電すると誘導できない状態ではありませんか。
働かせ続ける
余震、ガス漏れ、天井や配管の損傷が疑われる中で、安全確認前に業務を再開させていませんか。
帰宅させる・待機させる
交通停止や火災の危険がある中で、誰が、何を基準に帰宅・待機・避難を決めるのでしょうか。
社長が不在でも、その判断はできますか?
発生直後は、電話も通信もつながらない可能性があります。責任者、点呼方法、業務停止の基準、避難先、家族への連絡、帰宅判断が決まっていなければ、現場の一人が重い判断を抱えることになります。
考えておきたいケース|責任者と連絡が取れない
店長の指示を待っている間に、避難する時間を失ったら
大きな地震が発生し、津波警報が出ています。店舗にいるのはアルバイト従業員だけ。店長へ何度電話してもつながりません。「勝手に店を閉めてよいのか」「レジや商品をそのままにしてよいのか」と迷っている間にも、津波は近づいてきます。
その従業員は、自分の判断で店を閉め、すぐに逃げられるでしょうか。
アルバイトにも「逃げる権限」を伝える
責任者の許可を得てから避難する仕組みでは、通信が途絶えたときに判断が止まります。津波、火災、倒壊など生命の危険が迫る場合は、雇用形態や役職に関係なく、営業や現金管理より避難を優先し、各自の判断で退避できることを平時から明確にしておく必要があります。
実際に争われた事例|七十七銀行女川支店事件
屋上へ避難した従業員を、想定を超える津波が襲った
東日本大震災の発生後、女川支店では行員らが支店屋上へ避難しました。しかし、支店付近を襲った津波は屋上を超え、行員・派遣スタッフ12名が死亡または行方不明となりました。
亡くなった方々のうち3名の遺族は、より高い場所へ避難させるべきだったとして、銀行に安全配慮義務違反があったと主張しました。
裁判所は、どう判断したのでしょうか
裁判所は、使用者には自然災害からも従業員の生命・健康を守るよう配慮する義務があるとしました。一方、当時得られた情報から屋上を超える津波を具体的に予測することは困難であり、屋上への避難指示が不合理だったとはいえないとして、銀行の責任を認めませんでした。遺族側の請求を棄却した判断は、最高裁で確定しています。
責任が否定されたから、備えなくてよいわけではありません
この事例が示すのは、「自然災害だから会社は責任を負わない」という単純な結論ではありません。どの情報を集め、どこを避難先とし、状況の変化に応じて誰が避難先を変更するのか。平時の計画と発生時の判断が、後から具体的に検証される可能性があります。
平時に確認したい5つのこと
- 転倒・落下・移動する設備は固定されているか
- 避難経路と非常口はいつでも使えるか
- 全員を確認する点呼方法があるか
- 業務停止、避難、待機、帰宅の判断者が決まっているか
- 訓練と見直しの記録を残しているか
ご確認ください
本ページは一般的な経営リスク情報です。個別の事故における責任や必要な対応は具体的状況により異なります。実際の事故や個別判断は、関係機関または適切な専門家へご確認ください。


