魔が差した、、、私ともあろうものが診察室で患者にキスをしてしまった、、、

診察室で患者にキスをした歯科医院長と、電話・内容証明・SNS投稿・休診へ広がる経営リスク

「魔が差した。」

「私ともあろうものが……。なぜ、あんなことをしてしまったのだろう。」

診療が終わり、患者と二人きりになった診察室。いつもより会話が弾み、院長は「自分に好意があるのではないか」と思い込んでしまいました。

そして、ほんの一瞬の判断で、一線を越えました。

患者にキスをしてしまったのです。

患者は驚いた表情のまま医院を出ました。その場では大きな声も上げず、受付にも何も言いませんでした。

院長は「謝れば分かってもらえるかもしれない」「相手も嫌ではなかったのかもしれない」と考えたくなります。しかし翌朝、医院の電話が鳴りました。

「昨日、院長先生からされたことについて、お話があります。」

電話の相手は患者本人かもしれません。家族かもしれません。数日後には、弁護士名の書面が届くこともあります。患者が警察や相談機関へ相談する可能性もあります。

一人の院長の数秒の行為が、個人の後悔だけでは終わらず、医院全体の問題へ変わり始めます。

最初の電話で、言ってはいけないことがあります

抗議を受けた院長は、動揺から自分で説明したくなるかもしれません。

「誤解です」「相手にも好意があると思った」「大ごとにしないでほしい」「家族やスタッフには言わないでほしい」――。

しかし、こうした言葉は相手の受け止めをさらに悪化させ、後の事実確認を難しくするおそれがあります。謝罪を急ぐあまり、確認していない事実や条件まで約束することにも注意が必要です。

まずは相手の話を遮らずに受け止め、連絡日時、相手、申告内容、要求、院内に残る記録を整理します。診療記録、防犯カメラ、予約・会計記録、当日のスタッフ配置、電話やメールの履歴などは、削除・変更せず保全します。

  • 本人へ繰り返し直接連絡しない:謝罪のつもりでも、圧力や口止めと受け取られることがあります。
  • スタッフへ口裏合わせを求めない:記憶や記録の信用性を損なうおそれがあります。
  • 記録を消さない・書き換えない:診療記録、映像、メール、通話記録等をそのまま残します。
  • 一人で結論を出さない:早い段階で弁護士など適切な専門家へ相談し、対応窓口を決めます。
  • 診療体制を確認する:当該患者との接触を避ける方法、担当変更、スタッフへの必要最小限の共有を検討します。

「好意があると思った」は、同意の確認ではありません

会話が弾んだこと、笑顔だったこと、以前から親しく話していたことは、キスへの同意を意味するとは限りません。

とくに診察室では、医療従事者と患者という立場があります。患者は治療を受けるために来院し、診療台の上で院長の判断や手技に身を委ねています。その環境での接触は、院長が思う以上に強い恐怖や圧迫感を与える可能性があります。

刑事上・民事上・行政上どのような評価になるかは、接触の態様、相手の意思、前後のやり取り、診療との関係、証拠など個別事情によって異なります。直ちに特定の犯罪や責任が成立すると断定できるものではありませんが、患者が警察や性犯罪・性暴力に関する相談窓口へ相談する可能性は現実に想定しておく必要があります。

問題は、院長個人だけにとどまりません

患者や家族からの抗議は、やがて医院の受付やスタッフにも届きます。弁護士から内容証明郵便が届けば、誰が受け取り、誰が対応するのか。警察から照会や連絡があれば、診療を続けながら何を確認するのか。院内で何も決まっていなければ、混乱は広がります。

さらに、口コミサイトやSNSへ「診察中に院長からキスをされた」と投稿されれば、事実関係を十分に説明できないまま情報だけが広がることがあります。医院側が感情的に反論したり、投稿者を特定しようとしたりすると、二次的な批判を招くおそれもあります。

スタッフは「自分も患者から聞かれたらどう答えるのか」「この医院で働き続けてよいのか」と不安になります。予約のキャンセル、採用への影響、取引先や地域での信用低下、院長が診療できない期間の売上減少へ波及する可能性もあります。

必要なのは、隠すことでも、すぐに全面否定することでもありません。事実確認、相手への対応、院内共有、診療継続、広報対応を分け、限られた担当者で整理することです。

魔が差したのは数秒。しかし、その後始末は長く続くかもしれない

魔が差したのは数秒。しかし、その数秒の後始末は長く続くかもしれません。

患者への対応、家族や代理人との連絡、警察への相談の可能性、診療記録や映像の保全、スタッフへの説明、口コミ・SNS、予約キャンセル、休診、そして医院の信用回復。

それまで問題を起こしたことのない院長でも、一瞬の思い込みと判断によって、積み上げてきた医院経営全体を揺るがすことがあります。

経営リスクは、悪意や常習的な問題行動からだけ生まれるものではありません。「自分は大丈夫」と思っている人の、たった一度の境界線の越え方から始まることもあります。

3分チェック|一瞬の判断を医院全体の危機にしないために

□ 診療上必要な接触と私的な接触の境界を、院内で明確にしている
□ 患者と二人きりになる場面の運用を確認している
□ 患者から抗議を受けた際の記録様式と報告先がある
□ 院長本人が当事者になった場合の代替責任者が決まっている
□ 診療記録、防犯カメラ、電話・メール等の保存ルールがある
□ 本人、家族、弁護士、警察からの連絡窓口を一本化できる
□ スタッフへの共有範囲と患者対応の説明文を決められる
□ 口コミ・SNSに感情的な反論をしないルールがある
□ 院長が診療できない場合の休診・代診・資金対応を確認している
□ 医療機関のトラブルに対応できる弁護士等の相談先がある

一つでも決まっていない項目があれば、問題が起きる前に整理しておく価値があります。

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相談窓口

患者からの抗議、家族・代理人からの連絡、警察への相談が疑われる状況、口コミ・SNSへの投稿、スタッフへの影響が生じている場合は、相手へ繰り返し連絡したり、記録を動かしたりする前に、医療機関のトラブルに詳しい弁護士など適切な専門家へご相談ください。

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参考資料・最終確認

  • 警察庁「性犯罪被害相談電話全国共通番号 #8103(ハートさん)」
  • 警察相談専用電話 #9110

最終確認日:2026年8月31日

本記事の物語は、医院経営で起こり得るリスクを説明するための架空の設定であり、特定の人物、医院、事件を題材としたものではありません。法的評価や必要な対応は、接触の態様、相手の意思、前後の状況、証拠その他の具体的事情によって異なります。本記事は個別案件の法的判断を示すものではありません。

ご確認ください

本ページは、法人・医療機関等の経営リスクを考えるための一般的な情報です。個別の事案における責任の有無や必要な対応は、具体的な状況によって異なります。実際の個別判断については、関係機関または適切な専門家へご確認ください。

相談窓口では、現在気になっているリスクや、平時に確認したい事項を整理します。特定の商品を勧めるものではありません。

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