「今どき、銀行は個人保証を取らないでしょ?」——そうとは限りません。
「最近は、銀行も個人保証を取らないと聞く。それなら、うちは大丈夫だろう」
確かに、個人保証を付けない融資は増えています。
しかし——そうとは限りません。
新しい融資で個人保証を求めない動きが広がっていることと、昔からの保証契約が残っていないことは別です。
過去の借入れ、設備資金、借換え後も続いている保証。院長本人も意識していなかった個人保証を、亡くなったあとに家族が初めて知ることがあります。
葬儀のあと、娘に銀行から一本の電話が入った
院長の葬儀が終わって、まだ数週間。県外で暮らす娘のもとへ、銀行から連絡が入りました。
「お父さまが連帯保証人となっていた、医院の借入金についてお話があります」
娘は医院を継ぐつもりも、経営に関わるつもりもありませんでした。父が医院の借入れを個人保証していたことさえ、初めて知りました。
「今どき個人保証はない」と思っていても、相続人である以上、「知らなかった」「医院とは無関係だった」だけでは終わらない可能性があります。
個人保証は、本人の死亡で消えるとは限りません
相続の対象になるのは、預金や不動産などのプラスの財産だけではありません。借入金などの債務に加え、故人が負っていた保証債務も、契約内容や具体的な状況によっては相続人へ承継されます。
つまり、院長が医院の借入金を個人保証していた場合、院長が亡くなっても保証が当然に消えるとは限りません。医院を継がない配偶者や子どもに、金融機関から確認や請求の連絡が入ることがあります。
「会社の借金」と「父の保証」は別の話です
借りたのは医院や法人でも、保証契約を結んだのは院長個人です。
そのため、「法人の借金だから家族には関係ない」「医院を継がないから関係ない」とは言い切れません。大切なのは、誰が借主なのかだけでなく、誰が、どの借入れを、どの範囲まで保証しているのかを確認することです。
相続放棄を考えるにも、時間は止まりません
相続放棄や限定承認には、原則として「自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内」という期限があります。
しかし、家族が個人保証の存在を知らなければ、葬儀や医院の整理に追われる間に時間だけが過ぎていきます。預金や不動産だけを見て判断し、後から保証債務が判明することもあり得ます。
問題は、個人保証があることだけではありません。家族が、その存在を知らないことです。
院長が元気な今、確認しておくこと
- どの借入れに院長個人の保証が付いているか
- 借入先、残高、返済状況、担保の内容
- 保証契約書など重要書類の保管場所
- 万一の際に家族が連絡する金融機関・税理士・専門家
- 個人保証の存在を家族が把握しているか
「借入れは法人名義だから大丈夫」ではなく、院長個人の名前がどこに残っているかまで確認しておく必要があります。
本ページは一般的な情報です。保証債務の承継、相続人への請求、相続放棄・限定承認の扱いは、保証契約、借入残高、担保、相続関係その他の事情によって異なります。実際に相続が発生した場合や保証債務が判明した場合は、弁護士、司法書士、税理士、金融機関等へ早めにご確認ください。


