園長先生、理事長先生。
給食を終え、部屋を暗くする。子どもたちは静かに眠り、朝から動き続けてきた職員にも、ほんの一瞬、眠気が差す。
「そんなこと、うちの園ではあり得ない」
そう思うかもしれません。しかし、午睡中に怖いのは異変だけではありません。
異変への気づきが遅れることです。
乳幼児突然死症候群(SIDS)は、それまで元気だった乳幼児が、事故や窒息ではなく睡眠中に突然亡くなる病気です。原因は十分に分かっておらず、見守りによって必ず防げるものではありません。
一方、睡眠中には、寝具や姿勢などによる窒息その他の事故も起こり得ます。園に求められるのは、異変を早く捉え、迷わず対応につなげられる状態をつくることです。
万一のとき、園は説明できますか?
重大な異変が起きれば、園は状況を確認されます。
「その時間、先生は何をしていましたか?」
「いつ、誰が、どのように確認していましたか?」
「異変に気づいた後、どう動きましたか?」
「見ていたはずです」「いつも確認しています」だけでは、経過を十分に説明できないことがあります。必要なのは、日頃の運用と、その時刻の確認を裏づける記録です。
午睡チェックを、印を付ける作業にしない
園児一人ひとりの顔色、呼吸、寝る向き、発汗、嘔吐物の有無などを目で見て、普段と違う様子がないか確認します。年齢、発達、体調や既往歴も踏まえ、園のルールと所管自治体の基準に沿って観察することが大切です。
午睡センサーなどの機器は補助です。機器があっても、職員による観察が不要になるわけではありません。
姿勢と寝具も確認する
うつぶせ寝は、あおむけ寝よりSIDSの発症率が高いことが知られています。医学上の理由がある場合を除き、乳児は眠り始めにあおむけに寝かせることが基本とされています。
寝返りができる子どもの扱いなどは、月齢や発達、医師の指示によって異なります。国や自治体の資料、園医等の助言を確認してください。
柔らかい寝具、枕、ぬいぐるみ、タオル、ひもやコードが顔や首の周囲にないか、子どもの顔が見える配置になっているかも確認します。
職員の注意力だけに頼らない
見守り担当者に、電話、来客、記録作業などが重なれば、確認が途切れる可能性があります。「眠らないように気をつける」だけでなく、次を園の仕組みにしておきましょう。
- 見守り担当者と交代者を決める
- その場を離れる際の引継ぎを決める
- 欠勤時にも安全を保てる配置を考える
- 疲労や体調不良を申告しやすくする
「誰かが見ているはず」という空白をつくらないことが重要です。
異変後の数分を、平時に決める
反応がない、呼吸や顔色が普段と違う。異変に気づいたとき、迷っている時間はありません。
119番通報、一次救命処置、AED、ほかの園児の安全確保、園長への報告、保護者への連絡。誰が何を担うかを決め、実際の午睡室を使って訓練しておきましょう。新任職員や応援職員にも、連絡先や救急用品、AEDの場所が分かる状態が必要です。
3分で確認してください
- 今日の見守り担当者と交代者を言えますか?
- 全職員が同じ確認項目と記録方法を説明できますか?
- 子どもの顔、呼吸、姿勢を目で確認できる配置ですか?
- 担当者が離れるときの引継ぎがありますか?
- 119番、救命処置、AED、保護者連絡の役割が決まっていますか?
- 記録に時刻、確認者、子どもの状態が残りますか?
- 疲れた職員が交代を申し出られますか?
事故を完全になくせるとは言い切れません。それでも、異変に早く気づく見守り、迷わず動く体制、日々の記録は整えられます。
「先生は見ていました」ではなく、「この時刻に、この職員が、この状態を確認しました」と説明できる園へ。
午睡は子どもが眠る時間です。しかし、見守る側まで止まってよい時間ではありません。
参考資料
こども家庭庁「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」
厚生労働省 e-ヘルスネット「乳幼児突然死症候群 / SIDS」
厚生労働省「乳幼児突然死症候群(SIDS)について、よくあるご質問」
ご確認ください
本ページは、教育・保育施設等の午睡中の安全管理を考えるための一般的な情報です。SIDSその他の疾病や事故を必ず防ぐことを保証するものではありません。必要な観察方法、頻度、記録、職員配置、救命対応等は、施設種別、子どもの年齢・発達・健康状態、所管自治体の基準等によって異なります。実際の運用や個別の判断は、所管自治体、園医、医療機関、弁護士その他の専門家へご確認ください。


