建設現場で、下請けの作業員が資材に腕を挟まれ、怪我をしました。
事故直後、元請けの担当者は下請けの社長に言いました。
「おたくの社員が、おたくの作業中に起こした事故ですよね。下請けで責任を持ってください」
確かに、作業していたのは下請けです。
しかし――それで元請けの責任まで消えるのでしょうか。
事故を起こしたのは下請け
作業手順を誤った。教育が足りなかった。危険を見落とした。
その原因が下請け側にあれば、下請けの責任は当然問われます。
ここまでは、元請けの言うとおりです。
では、工程を組んだのは誰でしょうか?
その日は、雨で遅れた工程を取り戻すため、元請けから「今日中に進めてほしい」と指示が出ていました。
資材搬入と設備工事が同じ時間帯に重なり、通路には作業員と車両が入り交じっていました。
作業時間を決めたのは
作業場所を調整したのは
危険な重なりを止められたのは
事故後に問われるのは、「誰の社員か」だけではありません。
下請けに任せても、元請けの役割は消えない
建設現場の元請けには、工事全体の工程管理、業者間の連絡調整、現場巡視、安全上の指導などの役割があります。
民法716条も、請負人が起こした事故について注文者が常に責任を負うとはしていませんが、注文や指図に過失がある場合まで免責しているわけではありません。
また、労働安全衛生法は、元方事業者に対し、下請けへの法令遵守指導や、混在作業による事故を防ぐための連絡調整・巡視などを求めています。
下請けに施工を任せることはできても、現場全体を見る役割まで丸投げはできません。
原因も調べずに「全部下請けの責任」と言えば、下請け側も自社を守るため、元請けの指示、無理な工程、危険を伝えた記録を出してきます。
「下請けで責任を持て」と言った瞬間、協力会社だった相手が、責任を争う相手に変わるのです。
事故直後に確認する4つ
- 負傷者の救護と二次災害の防止
- 現場、写真、工程表、指示記録の保全
- 元請けと下請け双方からの事実確認
- 原因が分かる前に責任を断定しない
3分チェック
□ 複数業者の作業が重なる時間と場所を把握している
□ 工程変更の指示を記録している
□ 下請けから危険の申出を受ける仕組みがある
□ 現場巡視と是正内容を残している
□ 外部への対応と、下請けとの費用負担を分けて考えられる
それ、元請けの都合ではありませんか?
下請けには、下請けの責任があります。
元請けには、元請けの責任があります。
事故が起きたときだけ「そこは下請けの範囲」と線を引いても、事故の原因までその線に従ってくれるとは限りません。
その工程を決めたのは誰か。その指示を出したのは誰か。その現場を見ていたのは誰か。
まず確認すべきは、そこです。
参考資料・最終確認
- 民法716条
- 労働安全衛生法29条・30条・31条
- 厚生労働省「元方事業者による建設現場安全管理指針」
- 国土交通省「一括下請負の禁止について」
最終確認日:2026年9月3日
本記事は架空の設定による一般的な情報です。責任の有無や範囲は、事故原因、契約関係、指示・監督の状況、現場の規模等によって異なります。個別の判断については、関係機関または適切な専門家へご確認ください。


