ランサムウェア③「被害者は、私ですよね?」

情報流出の被害者なのに退職を求められ、施設長へ怒りを訴える介護職員のイラスト

流出から数日後。

あの電話の男が、介護施設へ現れました。

玄関で彼女を見つけると、笑って言いました。

「久しぶり。やっと見つけた」

その声を聞いた瞬間、彼女の体は固まりました。

昔、何度断ってもしつこく連絡してきた客の男でした。

警察へ相談し、男はその場から離れました。

しかし、施設長が次に呼んだのは、彼女でした。

「しばらく休んでもらえないかな」

「どうして私が休むんですか?」

「入居者や家族に何かあってからでは遅い。施設も困っているんだ」

「それは、私のせいですか?」

涙をこらえながら、彼女は立ち上がりました。

「情報を漏らしたのは施設ですよね?」

「施設へ来たのは、あの男ですよね?」

「それなのに、どうして私が辞めるんですか?」

「被害者は、私ですよね?」


勤務に問題はありませんでした

現在の勤務態度に問題はない。入居者への対応にも問題はない。施設の規則に違反した事実も確認できていない。

それでも、「入居者を守るため」「施設の評判に響くかもしれない」という理由で、彼女に休職や退職を求めようとしていました。

解雇には、客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が問われます。本人の望まない自宅待機、配置転換、退職勧奨にも慎重な判断が必要です。

施設も被害者だったはずなのに

ランサムウェア攻撃をしたのは犯罪者です。情報を盗まれた施設も被害者です。

しかし、流出した過去を理由に本人を追い詰めれば、施設は別の問題を自ら作ることになります。

最初にやること

  1. 流出した過去と、現在の勤務評価を切り分ける
  2. 本人の希望を聞かずに休業や配置転換を決めない
  3. 職場内の噂、侮辱、画像の転送を止める
  4. 本人と施設の安全対策を講じ、入居者家族には必要以上の個人情報を説明しない
  5. 退職、処分、配置転換を伝える前に専門家へ相談する

3分チェック

□ 風評だけで人事判断をしない仕組みがある
□ 退職勧奨と解雇の違いを理解している
□ 個人情報流出後の職員ケアを決めている
□ 職場内の二次拡散を禁止できる
□ 外部の人物が押しかけた際の安全対応が決まっている

施設長は、被害を早く収めようとしただけかもしれません。

しかし、その判断で新しい争いが始まります。

情報を盗んだのは犯罪者です。

職場まで押しかけたのは、しつこい元客です。

それでも、職場から追い出されるのは彼女なのでしょうか。

この中で、守られるべき人は誰でしょうか?

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参考資料・最終確認

最終確認日:2026年9月3日

本記事は、経営上のリスクを考えるために一般化・再構成した架空事例です。実際の安全配慮、人事・労務上の判断は、具体的な状況に応じて警察、弁護士、労務の専門家等の適切な専門家へご確認ください。

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