彼女は、真面目な介護職員でした。
遅刻も欠勤もほとんどなく、入居者の家族からの評判も良い。
ところがある日、青ざめた顔で施設長室へ来ました。
「私の履歴書(過去)が、ネットに出ています」
流出していたのは、履歴書だけではありません。
採用面接の記録も、一緒に公開されていたのです。
面接でしか話していない過去
採用面接のとき、履歴書の空白期間について聞かれました。
彼女は迷った末、正直に答えました。
「その時期は、デリヘルで働いていました」
施設は彼女を採用しました。その後の働き方に、何の問題もありませんでした。
しかし、ランサムウェア攻撃によって履歴書と面接記録が流出しました。
住所。顔写真。家族の情報。そして、誰にも知られたくなかった過去。
その数日後、施設へ一本の電話が入りました。
「そちらに○○さんという女性がいますよね?」
「昔、よく会っていたんです。今日、出勤していますか?」
職員が答えを断ると、男は静かに言いました。
「大丈夫です。場所は分かったので、今から行きます」
デリヘル時代の、しつこい客でした。
「事実だから」で済ませられるでしょうか
問題は、過去の仕事をどう評価するかではありません。
採用のために預かった情報を、施設が守れなかったことです。
漏れた情報によって、本人が離れたはずの過去と、現在の職場がつながってしまいました。
漏洩が疑われたら、流出した情報の種類、対象者、範囲を確認し、必要に応じて関係機関への報告や本人への通知を検討します。職員同士で画像を転送したり、噂を広げたりする行為も止めなければなりません。
最初にやること
- 流出ページや画像を必要な範囲で証拠保全する
- 職員へ閲覧・保存・転送をしないよう伝える
- 履歴書と面接記録の保存場所、閲覧権限を確認する
- 本人へ分かっている事実と、まだ分からないことを分けて説明する
- 本人の安全を確保し、調査、報告、通知について専門家へ相談する
3分チェック
□ 不採用者を含む履歴書の保存期間を決めている
□ 採用面接記録を誰でも見られる状態にしていない
□ 身分証明書の写しを必要以上に保管していない
□ 職員の個人情報が保存されている場所を把握している
□ 情報流出後の社内での拡散を止める手順がある
彼女が施設へ預けたのは、履歴書でした。
過去まで世間に公開する許可を、与えたわけではありません。
盗まれたのは、データだけではありません。
住所を知られる。職場を知られる。会いに来られる。
情報漏洩は、画面の中だけで終わらないのです。
参考資料・最終確認
最終確認日:2026年9月3日
本記事は、経営上のリスクを考えるために一般化・再構成した架空事例です。特定の職業や経歴を否定的に評価する意図はありません。個別の判断は適切な専門家へご確認ください。


