理事長先生、園長先生。
事故が起きたとき、「法人が対応するから自分個人は関係ない」と考えていませんか?
事故から3か月。
園には弁護士が入り、保護者への対応も続いていた。
理事長は思っていた。
「大変な事故ではある。でも、法人としてきちんと対応していくしかない」
ところが――。
ある日、理事長宛てに書類が届いた。
そこに書かれていたのは、
「理事長個人の責任についても追及する」
という内容だった。
「え?」
「園の事故ですよね?」
「なぜ私個人なんですか?」
事故は3か月前。
園庭で遊んでいた園児が遊具付近で転倒し、救急搬送された。
そして、重い後遺障害が残った。
事故直後、園長も職員も必死だった。
救急車。
保護者への連絡。
事故状況の確認。
謝罪。
行政への報告。
理事長も、
「とにかく誠意をもって対応しよう」
と指示した。
ところが保護者側に弁護士が入ると、調べられる範囲が変わった。
「当日の職員配置を出してください」
「遊具の点検記録を出してください」
「過去のヒヤリハットを出してください」
そして――
「以前から人手不足だったのではありませんか?」
さらに職員への聞き取りで、こんな話が出てきた。
「前にも危ないと思ったことはありました」
「園長先生には伝えたことがあります」
話は事故当日の担当職員から、園長へ。
そして法人へ。
ついには理事長へ向かっていった。
「私は現場にいなかった」は通用するのでしょうか?
理事長は園庭にはいなかった。
園児を見ていたわけでもない。
遊具を管理していたわけでもない。
それでも問われる可能性があるのは、
「法人として、事故を防ぐ体制を作っていたのか」
という問題です。
そして、さらに怖いのは、
「以前から問題を知っていたのに、何もしなかったのではないか」
と見られることです。
理事長先生。園長先生。
もし明日、重大事故が起きたとして――
「職員配置は適切でした」
「遊具は定期的に確認しています」
「ヒヤリハットは共有しています」
「職員への安全教育も実施しています」
「園長から重大な問題について報告を受ける仕組みがあります」
これらを、
記録を出して説明できますか?
「やっていると思います」
「園長に任せています」
ではなく、
証拠を出せますか?
事故が起きてから作ることはできません。
担当職員だけの問題ではない。
園長だけの問題でもない。
事故を防ぐ仕組みを法人として作っていたのか。
危険を知りながら放置していなかったか。
その説明を裏づける記録を残していたか。
重大事故が起きたとき、責任追及は、担当職員から園長へ、法人へ、そして理事長個人へと遡ることがあります。
訴えられるのは園だけとは限らない。
重大事故が起きた後の対応だけでなく、職員配置・安全管理・報告体制・記録の残し方を平時に確認しておきましょう。
参考資料
こども家庭庁「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」
ご確認ください
本ページは、教育・保育施設等の経営リスクを考えるための一般的な情報です。個別の事故における法人、理事長、園長、職員等の法的責任や必要な対応は、施設種別、契約関係、事故状況、管理体制その他の具体的事情によって異なります。実際の事故や個別の判断については、所管自治体、弁護士その他の適切な専門家へご確認ください。


