海外から3,000万円分の商品を輸入したA社。
輸送中、貨物船で大きな事故が発生しました。
社長が真っ先に心配したのは、自社の商品です。
ところが確認すると――。
「社長、うちの商品は無傷です。」
「そうか。よかった……。」
胸をなで下ろした社長。
ところが後日、思いもしなかった話が飛び込んできます。
「1,000万円、負担してください。」
「……え?」
「ちょっと待ってくれ。うちの商品は壊れてないぞ?」
無傷でも負担を求められる仕組み
船舶や積荷が共同の危険にさらされたとき、その全体を救うために合理的な特別の犠牲や費用が生じることがあります。
その犠牲や費用を、助かった船舶や貨物などの関係者が一定のルールで分担する仕組みが、共同海損(General Average)です。
たとえば、船内火災の消火、船を軽くするための貨物の投棄、避難港への入港、曳航などによって特別な犠牲や費用が発生することがあります。
自社の商品が無傷で助かった場合でも、共同の危険から救われた財産として、分担を求められる可能性があります。
「壊れていないから損失ゼロ」とは限りません
国内の通常の取引感覚では、商品が壊れていなければ損害はない、と考えがちです。
しかし海外輸送では、自社貨物の物的損傷だけがリスクではありません。
共同海損が宣言されると、事故後に共同海損精算人が関係資料を集め、救助された財産の価額や認められる犠牲・費用などをもとに分担額を精算します。
最終的な分担額が確定するまで時間を要することもあり、経営者にとっては突然の資金負担や資金繰りへの影響につながる可能性があります。
商品を受け取る前に、保証を求められることもあります
共同海損が発生した場合、荷主が貨物を引き取るために、共同海損保証状や共同海損盟約書などの提出を求められることがあります。
売買条件や輸送契約に応じて、関係事業者が保証手続きを進める場合があります。
一方、事前の取り決めや手当てが十分でない場合には、荷主自身が保証金などを用意しなければならないことがあります。
つまり、商品が無傷でも、必要な手続きや保証が整うまで引き取れない可能性があるのです。
海外輸送の契約で確認しておきたいこと
海外輸送では、貨物そのものの損傷だけでなく、共同海損分担金や救助費用などが発生した場合の負担も確認しておく必要があります。
誰がどこまで負担するかは、輸送区間、売買条件、運送契約、事故の状況などによって異なります。
輸入者が「当然、輸出者側で対応する」と思っていても、売買条件によっては自社が手配や費用負担を担う契約になっていることがあります。
事故が起きてからではなく、船積み前に、誰がどの手続きと費用負担を担うのか確認することが重要です。
経営者のための事前確認チェック
- □ 海外から商品、原材料、機械などを輸入している
- □ 売買契約上、誰が輸送中の手続きと費用負担を担うか確認している
- □ 売買・運送条件の対象区間が、実際の輸送区間と合っている
- □ 共同海損分担金や救助費用が発生した場合の負担を確認している
- □ 高額貨物について想定される負担額と資金手当てを確認している
- □ 事故時に連絡する運送会社、物流会社、社内担当者が決まっている
- □ インボイス、船荷証券、売買・運送契約書などをすぐ提出できる
- □ 保証状や保証金を求められた場合の社内担当者が決まっている
海外取引のリスクは、商品が壊れたときだけではありません
「商品は無傷だった」。その知らせだけで安心してしまうと、その後の分担や保証の手続きに対応できないかもしれません。
無傷の商品を前にして、初めて大きな負担を知る。
そうした事態を避けるため、売買条件、輸送契約、事故時の連絡先を平時から確認しておくことが、海外取引の経営リスク対策になります。
法人リスクダムの事前対策相談
法人リスクダムでは、海外輸送における売買条件、輸送契約、共同海損への備え、事故時の初動など、会社が事前に確認しておきたいポイントを整理します。
ご確認ください
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・契約判断を行うものではありません。共同海損の成立、認められる犠牲・費用、分担額、貨物の引取りに必要な手続きは、事故の状況、船舶・貨物等の価額、運送・売買の契約条件、適用される規則等によって異なります。個別の事案は、運送会社、物流会社、海事関係者、弁護士等の専門家へご相談ください。
※本文の「1,000万円」は、リスクを分かりやすく説明するための架空の例です。実際の共同海損の分担額等は、事故の状況、船舶・貨物等の価額、契約条件等によって異なります。


