「社長、ちょっといいですか……」
採用面接を担当した社員が、青い顔で入ってきた。
手には、代理人から届いた通知書。
先日、面接した女性からだった。
社長が通知書を読む。
「交際相手はいるのか」
「結婚する予定はあるのか」
そんな質問を繰り返し、さらに必要以上に身体を近づけるなど、女性が不快に感じる言動があったという。
「……お前、面接で何やったんだ?」
ところが――
届いていた通知は、それだけではなかった。
会社宛てにも、代理人から通知が届いていた。
「え?」
「面接したの、俺じゃないぞ?」
まだ、入社すらしていない。
女性は社員ではありません。
採用されたわけでもありません。
それでも、採用面接は会社の採用活動です。
面接担当者が応募者の尊厳や性的自由を侵害するような行為をすれば、面接担当者本人だけでなく、会社側の責任まで問題になる可能性があります。
実際に、採用を希望していた女性への性的な言動などをめぐり、行為者だけでなく法人側にも損害賠償責任が認められた裁判例があります。
面接官に一通。
会社にも一通。
まだ一日も働いていない。
それでも――
会社のリスクは、もう始まっています。

