「社長、お久しぶりです」
突然、一人で会社を訪ねてきた女性。
会社がまだ小さかった頃、一緒に働いていた。
そして――
昔、付き合っていた女性だった。
「久しぶりだな。どうしたんだ、急に」
「ちょっと話があって」
女性はスマホを取り出した。
そこには、若い男性の写真。
「この子、もう就職する歳なの」
「……誰?」
女性は社長の顔を見た。
「あなたの子よ」
「……は?」
「あなたの子」
社長の顔色が変わった。
「ちょっと待てよ。だってお前、ピル飲んでたって言ってたじゃないか!?」
「飲んでたわよ」
「じゃあ、なんで……」
「100%じゃないでしょ」
社長はスマホの写真をもう一度見た。
「……それで、今さら俺にどうしろっていうんだ」
女性は少し間を置いた。
「実は今日、連れてきてるの」
「え?」
「あなたの会社に入社させようかと思って。前もって伝えておこうと思いまして」
社長は言葉を失った。
社長には妻がいる。
そして、会社を継がせようと考えている息子もいる。
もし、本当に自分の子だったら
女性がそう言っただけで、親子関係が決まるわけではありません。
しかし、本当に自分の子だったら。
これは昔の男女関係だけの話では済まないかもしれません。
認知。
相続。
そして、社長が持つ会社の株式。
「会社は息子に継がせる」
家族の中では、そう決めていたとしても。
社長個人の過去が、
家族の問題になり、
相続や自社株の問題になり、
会社の承継にまで入り込んでくることがあります。
昔の話だから。
もう終わった話だから。
そう思っていたことが、
ある日突然――会社の玄関から入ってくることがあります。

