60 昔の女シリーズ③
あれから何年も経った。
昔の女性との間にできた子どもを認知した社長。
養育費のことも整理した。
会社では長男が役員となり、
「いずれ、この会社は息子に任せる」
社長もそのつもりだった。
ところが――
社長が突然亡くなった。
葬儀を終え、相続の話が始まった頃。
昔、認知した子どもが現れた。
「父の会社ですよね」
そして、静かに言った。
「僕も相続人ですよね?」
家族の空気が止まった。
問題は、預金や自宅だけではなかった。
社長が持っていた、
会社の株式。
会社は長男が継ぐ。
家族も社員も、ずっとそのつもりだった。
しかし、自社株も社長の財産だった。
会社を長男に残したい。
では――
もう一人の相続人には、何を残すのか。
そして、
そのためのお金は、どこにあるのか。
そこで家族は初めて気づいた。
後継者は決めていた。
でも、
会社を継がせるための「お金」は、準備していなかった。
自社株はいくらになっているのか。
経営者に万一のことが起きたとき、
会社を残すために、いくら必要になるのか。
その資金を、どう準備しておくのか。
昔の話が――
会社の承継問題になる前に。

