見えない残業シリーズ⑦
「よし、今日は仕事終わり!」
社長が立ち上がった。
「さあ、みんなで飲みに行こう!」
「今日は俺のおごりだ!」
社員たちも笑っている。
……ように見えた。
そのとき、一人の社員が言った。
「社長。これ、残業つけていいですか?」
「は?」
「だって、全員参加ですよね?」
飲み会まで残業なのかよ!
そう思う経営者もいるかもしれません。
もちろん、会社の飲み会=残業ではありません。
仕事が終わったあと、「行きたい人だけ行こう」。本当に自由参加で、断っても何の不利益もない。
通常、このような懇親会まで労働時間になるわけではありません。
実際、裁判例でも、業務後の懇親会や食事会について、原則として使用者の指揮命令下にあるとは言い難いとされています。
では、こんな場合はどうでしょう。
「今日は全員参加だからな」
「新人は来るよな?」
「部長が来るのに、お前帰るの?」
「付き合いも仕事のうちだぞ」
そして翌朝。「昨日、なんで帰ったの?」
「自由参加」と書けば自由参加?
問題になるのは、名前ではありません。
厚生労働省は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」としています。
たとえば研修でも、表向きは勤務時間外であっても、参加が業務上義務づけられている場合などは労働時間に該当します。
飲み会についても裁判例では、通常の懇親会は原則として労働時間ではない一方、「業務遂行上必要不可欠で、参加が事実上強制されているような場合」は別とされています。
つまり、「飲み会だったから」だけでは決まりません。
社長は「誘っただけ」。社員は「断れなかった」。
社長にとっては、「みんなで楽しく飲もうよ」だった。
でも社員から見れば、「社長からの命令だと思いました」だったかもしれません。
会社が代金を払ったか。酒を飲んだか。居酒屋だったか。
それだけで決まる話ではありません。
見るべきなのは、その実態です。
「その飲み会、本当に断れましたか?」
※労働時間に該当するかどうかは、個別の状況によって判断されます。
